認定考査の意味、勉強方法と特別研修/Kさんの合格体験記

認定考査を受験する意味

訴訟代理業務を行わないのであれば、認定考査の受験は不要だと考える方もいるかもしれません。

確かに登記業務に簡裁代理権は不要です。しかし司法書士として働いているとお客様から様々な法律相談を受けることがあり、この相談にお応えするには、認定考査を合格した認定司法書士となる必要があるのです。

簡裁代理権の有無は、代書屋と法律家との違いに他なりません。
簡裁代理業務を行うかどうかに関わらず、私にとって認定考査合格は、法律家司法書士と なるための最後の登竜門でした。

特別研修と認定考査

認定考査を受験する前提として、1月から始まる特別研修を1コマたりとも休まず修了することが必要です。

この時期は、多くの新人司法書士が司法書士事務所での勤務を開始するタイミングです。
同期の中には、「事務所に慣れるので精いっぱい。特別研修はとにかく修了さえすればいい。模擬裁判の勝敗も気にしない。」という方も少数ではありませんでした。

けれど皆、終盤になると特別研修の大切さに気付かされるのです。

講義では、特別に訓練を受けた先輩司法書士や弁護士から、認定考査に必要な知識をじっくりと教えて頂くことができます。分からないことがあれば、すぐに質問もできます。

特に私のグループの担当チューターのお一人が、民訴のスペシャリストであり「ながめてわかる!」の著者でもある小山弘先生であったことは、幸運としか言いようがありません。

小山先生からは、認定考査に必要な知識のみならず、司法書士として心構えや誇りを教えて頂 きました。今も心に残る言葉の数々は、大切な宝です。

また15人から構成されるグループの仲間とは、知識や情報を共有することができ、模擬裁判の準備では喧々諤々、意見をぶつけ合うことで、要件事実についての理解が一気に深まりました。

認定考査は、相対評価ではないので、同期の仲間はライバルではありません。私は自分の持っている知識や情報はどんどん仲間に公開するように心がけました。

その結果、同期から受け取る情報も増え、お互いを高めあうことができました。特別研修のクループの仲間とは今でも交流があり、業務上の疑問や悩みも気軽に相談しあっています。

特別研修は、認定考査の受験資格を得るためだけのものではありません。認定考査合格に必要な知識と一生の仲間を得る大切な機会なのです。

認定考査に向けての勉強方法

ネット上などで、「認定考査はしっかり準備しておけば、落ちる試験ではない」という言葉を目にすることがあります。しかし、その「しっかり」って何?というのが問題なのです。

そこで、認定考査までの道のりを振り返って、私なりの「しっかり」をご紹介します。

1 特別研修に向けての準備

特別研修は、受講生は本試験レベルの民訴法知識があること、要件事実等の予習はしてあることを前提に講義が進みます。

そこで、1月までに要件事実についての基本書を数冊、通読し、その中から自分に合っていると思う1冊を選び、始めから熟読し、要件事実の基礎を理解しておく。読むと きには、それが主要事実について述べているのか、抗弁について述べているのかを意識 すると、理解しやすいでしょう。また本試験レベルでいいので民事訴訟法の復習をしておくことも必要です。

仕事等で時間が取れない方や独学に慣れていない方は、対策講座を受講するのも有効かと思います。

これらのことを事前にするかしないかで、特別研修の効果は全く異なります。(予習 なしで参加すると、特別研修が只々辛いものになります。)

2 特別研修の受講

日々の予習を欠かさず、講義には積極的に参加し、講師からの質問には進んで答え、疑問点は持ち越さず質問する。同期との交流を大切にし、研修後も相談できる仲間を作 る。仕事との両立で大変な時期かもしれませんが、特別研修は数ある新人研修の中でも 最も有用な研修です。私はその効果を100%吸収する気持ちで、全力で取り組みました。

3 特別研修終了後から認定考査までの学習

要件事実を自分なりにまとめ直してみる。私はエクセルで表にしてみました。1で予習した時と比べると格段に理解は深まっています。その上で、過去問や対策講座等で提 供される模擬問題に取り組む。

私の場合、この頃は就職先での仕事も本格始動していたので、勉強時間の確保に苦労 しましたが、外回りの移動時間には、自分でまとめた要件事実の一覧の確認、昼休みに は、要件事実の小問か「簡裁訴訟代理等関係業務の手引」の問題を数問、週末には過去 問演習というペースで、常に要件事実、司法書士倫理に触れるようにしていました。

4 認定考査当日

どんなに対策していても、試験本番には初見の問題が出てくることがあります。今回もそうでした。 限られた時間の中で、初見の問題に満点答案を作ることは難しいと思います。

しかしそれまで培った知識を使って冷静に考えれば、正解から大きくずれることはありません。 逆に言えば、理解が浅く、知識が曖昧では対応できないということです。

「しっかり準備」とは、こういう場面に対応できるレベルまで知識を高めるというこ となのだと思います。

認定考査を目指す方々へ

このように書いていくと、認定考査に向けての勉強はとても厳しいものに感じられてしまうかもしれませんが、要件事実の学習は、基本さえ理解すれば具体的なイメージを掴みやすく、司法書士本試験対策に比べると格段に楽だという意見が大半です。
問題は、学習を始めるタイミングと学習時間の確保です。

これをお読みになっている方々のほとんどは、司法書士本試験に合格して、ほっとされている頃かもしれません。しばらくは勉強から離れて羽を伸ばしたいところではありますが、 認定考査対策は、特別研修までにどれだけ予習ができていたかが大きなカギとなります。

就職活動や新人研修が始まると、なかなかまとまった時間は取れなくなります。まずは早い時期に基本書を手に取り要件事実に触れておく、もしくは対策講座の受講を開始することを強くお勧めします。

(第17回 簡裁訴訟代理等能力認定考査合格 Kさん)