司法書士特別研修の日程・費用と内容まとめ

裁判所の門
新人向けの研修のハイライトは、『司法書士特別研修』です。
この研修は、例年、1月下旬~3月上旬(主に週末。平日も数日)に実施されます。

なお、それに先立つ1月上旬~下旬は、連合会の中央新人研修やブロック研修(全国の司法書士会を8ブロックに分けて実施される)が実施されます。

このように、年が明けると、研修に明け暮れます。文字どおり、息つくヒマもありません。

つまり、年が明けると、特別研修に備えてじっくり予習する時間はない、ということです。
皆さんは実感が湧かないでしょうが、この現実は知っておくべきです。

特別研修は、まず無事に修了すること自体がひと仕事です。
すなわち、時間、知力、体力、金力そして気力が求められます。

期間にして正味約1か月間ではありますが、総力戦です。
風聞を耳にしている人もあるかも知れませんが、司法書士試験よりキツイと音を上げる人もあります。

まずは特別研修の概要をおさえて、心の準備だけでも整えておいてください。

司法書士特別研修の概要

 特別研修では、主に「要件事実」の勉強をする。
要件事実の考え方は、裁判実務において欠くことのできない基礎的かつ必須の素養である。
そこで、簡裁代理の資格を得ようとする司法書士にとっても、要件事実の勉強は必要だというわけである。
特別研修は、合計100時間の研修時間・内容で構成される。

特別研修の日程

例年1月下旬~3月上旬(主に、土曜日~月曜日)
なお、平日の2日間(いずれも13:00~16:00)、簡易裁判所の傍聴が実施される。

特別研修の費用、実施場所

第17回特別研修では、約15万円でした。
実施場所は、全国8ブロックごとに連合会から指定されます。

司法書士特別研修の内容

集合研修(約12時間)

(1) 集合研修の内容
民事訴訟法ほかの基本法令及び裁判実務の基礎知識を学ぶ。
(2) 研修の形態
予め収録された講義のDVDを大教室で試聴する。
(3) 集合研修の講師
学者、裁判官、弁護士、裁判所書記官
(4) 若干のコメント(ここだけの話)
講師は、訴訟物とか弁論主義といった用語を当たり前のように使って講義する。
つまり、受講者がこれらの用語は既に理解しているとの前提に立って話をする(この前提じたいが世間知らずというものだが)。

一方、受講者は、用語は聞きかじっていても、その活きた意味はほとんど知らない。

そこで、多くの受講者は、講義の内容を咀嚼できず(講義がヘタで、退屈なせいもある)、10分も経たないうちに眠りの第一波に見舞われる。
スマホいじりに興じ、チャットを始めるのも、法学部の大教室で展開される光景と寸分違わない(まだまだ学生気分は抜けていない)。漫画を読む猛者もある(家で読めばいいのに)。
講義が一コマ終了する毎に、「100時間研修はあと〇〇時間だ」と指折り数え出す者が出てくる(遠からず、残り時間数を勘定する気力も失せるが)。

グループ研修(約36時間)

(1) 内容
「売買」、「消費貸借」及び「建物明渡し」の事案を中心に、教材に登載されている具体的事案(設例)を解く。

 (2) 研修の形態
グループ(受講者約15名)で討議する。

 (3) 講師
司法書士(チューター)

 (4) 若干のコメント(ここだけの話)
ゼミ形式の学習であり、予習しないと討議に参加できない。のみならず、指名されて答えられないときは、恥を知る人間であれば自己嫌悪に陥るであろう。

司法書士試験に合格してしまったために、自分は法律家の卵なのだと錯覚し始めているのであろう、プライドだけは高い者が多い。
とりわけ、偏差値が高いという世評のある大学の出身者に。

これに対し、予習をしてきた者(のうち、筋のよい者)は、このグループ研修において実力をメキメキ向上させる。
チューターに人が得られれば、さらに実務への自信がつくかも。

ゼミナール(約18時間)

(1) 目的、内容
この研修の目的は、「グループ研修」の効果の確認にある。
例えば、民法や商法をはじめとする実体法の基礎知識を前提に、民事訴訟のごく基礎的なことがらを学習する。
すなわち、訴訟物や弁論主義といった基礎的な概念はもとより、要件事実(請求原因事実、抗弁事実、再抗弁事実等)の意味あるいは攻撃防御(主張、立証)の基本構造等を学習する。
(2) 研修の形態
グループ研修の2つのグループ(合計約30名)で1組を組成し、講師から講義を受ける。
講義といっても、受け身で聴くだけでなく、双方向の形式で行われる。「双方向」とは、講師から指名されて答えを促されるという意味である。
(3) 講師
弁護士
(4) 若干のコメント(ここだけの話)
ゼミナールは、グループ研修の成果が上がったかどうかをチェックするのが主な目的である。

しかし、弁護士講師は、合格したての新人が民事訴訟法や民事保全法を知っているはずがない、あるいは司法書士チューターが裁判事務を教えられるわけがない、という前提に立っている(自身の経験に照らして?)から、ゼロから教えようとする。
例えば、「弁論主義とは、云々」と講釈を始めてしまう。

受講者は、そのようなことは受験時代に勉強しているから、時間の無駄だと叫びたいところである。
しかし、講師には逆らえないから、ひたすら忍耐するしかない。

特別研修の主催者の構想では、履修内容について疑問が生じたときは弁護士講師に質問すべきである(言い換えると、司法書士チューターは教えてはならない)という建前である。
しかし、ゼミナールの受講者数は約30名と多いため、講師にじっくりと質問できる雰囲気ではない。

模擬裁判(約12時間)

(1) 内容
具体的事案について、実戦形式の訴訟を実演する。
(2) 研修の形態
グループ研修の2つのグループが、原告側と被告側とに分かれて実際に訴訟を展開する。
グループ構成員は、全員、何らかの役割で訴訟行為をする(例えば、原告本人役、被告訴訟代理人役、証人役)。
(3) 講師
弁護士
(4) 若干のコメント(ここだけの話)
受講者は、肝腎の基礎知識が消化し切れていないため、実戦形式の訴訟といわれても、どのような訴訟行為をすればいいのか、皆目見当もつかない人が多い。

庵主のグループでは、模擬裁判に備え、実際に「立ち稽古」をさせている。稽古の中心は、尋問である。
だが、例年、およそ模擬裁判の体をなしていない。幼稚園の学芸会を見せられているような気分である。

ただ、彼らの名誉のために付言すると、そもそも尋問というものは新人ならずとも難しいものであり、経験のない新人にこれをさせるのがどだい無理な話なのだが。

法廷傍聴(約6時間)

 (1) 内容
具体的な訴訟事件を、法廷の傍聴席で実際に傍聴する。
 (2) 研修の形態
グループ研修の1グループを半分(7、8名)に分けて法廷に入り、傍聴する。
 (3) 引率者

   司法書士(チューター)

 (4) 若干のコメント(ここだけの話)
 生の事件であるから、さすがに居眠りしている受講者はない。ただ、多くの者は社会見学だと受け止めている節がある。
教材で学んだ基礎知識や条文が法廷ではどのように活かされているのか、を学ぶ格好のチャンスなのだが、そうした殊勝な心がけをもって臨む受講者は稀有である。
しかし、1回や2回くらいの傍聴では無理もないか。つい先頃までは、人生の苦悩を一身に背負っていると思い込んでいた受験生だったのだから。

 せっかくだから、法廷傍聴をする際のポイントを手ほどきしたい。
受講者であるあなたは、法廷内のどこに目配りをするつもりだろうか?
「いい機会だから、いろいろなことを貪欲に見てみたい」?
そのような料簡では、傍聴をする意義はない(スマホで法廷ゲームに興じるほうがマシである)。

 裁判官の目線の先を追うのである。
つまり、「裁判官はどこを注視しているか?」を、受講者であるあなたは観るのである。
そうすれば、裁判官は供述者(証人、当事者本人)の「眼」を注視していることに、あなたは気づくはずである。
なぜ、裁判官は供述者の眼を注視するのか?
それは、供述者の眼を見れば、彼がウソをついているかそれとも真実を述べているかが見抜けるからである(民事訴訟法第247条はそのことを規定している)。

 受講者であるあなた方(ここは複数形)が裁判官の眼を注視することには、慮外の副産物がある。
それは、あなた方の射るような(?)視線を浴びることにより、裁判官がいい心持(法廷ドラマの主役になった気分)になり、生き生きした訴訟指揮に努めるようになるからである。
もちろん、居眠りなどはできなくなる(居眠りをする裁判官があるという含意)。

 活気のあるいい法廷を作り上げるのは、裁判官や訴訟代理人たる弁護士には非ず、実は法廷傍聴人である「あなた」なのです。

司法書士倫理、簡裁代理権の範囲(約4時間)

 (1) 内容
裁判事務に関する司法書士法、民事訴訟法、民事保全法及び司法書士倫理の知識について学ぶ。
 (2) 研修の形態
講義(執務上の心構え等)
 (3) 講師
弁護士
 (4) 若干のコメント(ここだけの話)
「倫理」とは違和感のある言葉である。もっとほかに適切な言葉がありそうなものだが。
それはともかく、倫理とは、要するに、司法書士として、していいことと悪いこととを峻別できるだけの基本的な心構え、といえるであろう(今どきは、「峻別」できない事例が多いのだが)。

綱紀事件を惹き起こしてしまうと、当人の不利益はもちろん、依頼者たる国民も損害を被るわけだから、そのような不始末をしでかさないよう、講師ともども意識を高めなければならない。
いわば、研修の総仕上げである。

その他

     

  1. 特別研修は、法定研修である(司法書士法§3−Ⅱ①)。
  2.  

  3. 認定考査の資格要件
    特別研修を修了しないと、認定考査は受験できない。
  4.  

  5. 研修の「運営」の実際
    受講者のこれまでの経験に照らして、やや厳しいかも。
    例えば、1科目たりとも15分の遅刻・早退をすると、修了認定は受けられない(特別な要件の下に、補講という救済措置があるにはあるが)。
    したがって、その場合、その年度の認定考査は受験できない。もし、再挑戦するためには、次年度、特別研修を0から受講するしかない。

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